昨日の夜、「チームブライアン300点伝説」を読みました。
「チームブライアン」の方はブライアンオーサーの歴史とキムヨナの話が多かったのでちょっと残念でしたが(苦笑)、「チームブライアン300点伝説」の方は羽生選手とハビエル・フェルナンデス選手だけに焦点を当てて、ソチ五輪後の戦略や様々な出来事の裏側で何があったのかをオーサーの目線から語られています。
「羽生選手のあの時はあんな事を話し合ったんだ」「こんな事があったんだ」と興味深かったです。
羽生選手のあの中国杯での衝突事故の事、手術の事、4回転ループの事・・・。
気になっていた羽生選手の舞台裏を知る事が出来ました。
去年のグランプリファイナルで羽生選手が330点をとった時のオーサーコーチは首を横に振って「う~ん」という微妙な表情をしていたのでてっきり「こんな時期にこんな高得点をとってしまった」とでも思っているのかと思っていましたが、この本の中ではNHK杯の322点をとった後からすでにオーサーは羽生選手がこの点数を超える事を予想していたという風に書いてありました。
まさかグランプリファイナルですぐに超えるとは思っていなかったのかもしれませんが。
今シーズンから羽生選手は4回転ループを試合に入れ、フリーではトータル4本の4回転を入れましたが、その時のオーサーと羽生選手の話し合いのやりとりの内容も具体的に知る事ができました。
本の中に出てくるオーサーの「トータルパッケージ」という言葉。
オーサーがフィギュアスケートの新採点方式で高得点を出すためにGOEやPCS、いわゆる「トータルパッケージ」を大切にするというのは前から知っていましたが、私はこの言葉がイマイチ好きになれません。
「難しい技に挑戦するよりも演技全体の質を上げて得点を稼ぐ」というのはメダルを取るためには大切だというのは分かるんですが、演技の質だけを上げて無難なジャンプ構成だと見ている方は正直つまらない・・・。
演技を見る人を感動させるような、ずっと心に残るような演技にはならない気がします。
バンクーバー五輪の金メダリストであるキムヨナやエヴァン・ライサチェクの演技内容を覚えているか?
私はほとんど覚えていません。
ライサチェクなんか名前すら忘れてしまってさっきYahooで検索して思い出したくらいです(苦笑)。
いくら完璧な演技だったとしても、トリプルアクセルを跳ばなかったキムヨナや4回転を跳ばなかったライサチェクの演技を何度も見返したいと思う事はありません。
やっぱり浅田真央選手のようにトリプルアクセルに挑戦し続けたり、羽生選手のように4回転ループに挑戦したり4回転の数を増やして挑戦したりする選手の演技に興奮し、感動して何度も見返してしまいます。
オーサーの「トータルパッケージ」という考え方だけで果たして浅田真央選手のソチ五輪での伝説のフリー演技のようにずっと心に残る演技をする選手が育つのか?
まあ考え方は人それぞれだし、オーサーの場合は「チームブライアン」という組織の中で選手を育てているので確実に結果を出す事も大切なんだろうけど・・・。
羽生選手はトータルパッケージも大切にしつつ質の高い4回転ジャンプを何本も跳ぶので例外的ですが、普通は羽生選手のように演技の質と高難度ジャンプの成功を両立できる選手なんてそうそういないですよね。
4回転ループだけを練習する羽生選手に
「トータルパッケージを大切にしろ」
とオーサーが忠告すると、羽生選手は
「4回転ループは演技の一部」
「ジャンプ(4ループ)が決まらないプログラムはトータルパッケージではない」
と主張したそうですが、今まで「トータルパッケージ」でしかフィギュアスケートを考えてこなかったオーサーにとって羽生選手の考え方は衝撃だったんじゃないでしょうか。
「4回転をすべて成功させて、その上で演技も素晴らしいものにする」
今までオーサーにはなかった新しい考え方をする存在が羽生選手なんだと思います。
「チームブライアン300点伝説」は羽生選手の舞台裏を知る事が出来ると同時に、オーサーの指導方法についても改めてよく理解できました。
ちなみに本の中にあったんですが、平昌五輪が終わった後はGOEの加点幅が±5になるんですね・・・。
個人的にはGOEの加点幅は広げて欲しくなかったですが。
質の良いジャンプには簡単なジャンプだとしてもプラス5点が付いてしまったら高難度ジャンプに挑戦する意味がなくなるような気がします。
オーサーによると、チームブライアンの中に11歳の男子選手ですでに4回転ルッツなどの複数の4回転を跳ぶ選手がいるそうです。
羽生選手がテレビで言っていたようにビンセント・ゾウ選手も手を挙げたまま4回転ルッツ跳んじゃいますしね。
なので男子の場合はGOEの加点幅が変わっても今のような4回転時代は当分続くのかもしれません。
女子もトリプルアクセルや4回転を跳ぶ選手が何人も出てくれば楽しくなるのに、いつになることやら・・・。